カンボジア不動産市場の税制と外国人規制:最新リスクとチャンス
この記事では、2026年のカンボジア不動産市場を左右するキャピタルゲイン課税の延期と外国人居住者管理の強化という2つの重要な政策変更について解説します。税制と外国人規制の流れから、出口戦略の見直し、コンプライアンス対応、金融機関の目線の変化など、日本企業・投資家が今すぐ押さえるべき実務的なポイントを紹介します。

税制は追い風、規制は要注意
2026年のカンボジア不動産市場は「急回復」ではなく、政策に支えられた”選別相場”になりやすいです。
理由はシンプルで、税制面では追い風になり得る一方で、外国人関連の規制・管理は厳しめになっているからです。
つまり、案件選びと運用体制で差が出ます。
なぜ「選別の時代」なのか
まず、マクロで見ると、不動産・建設の減速が課題になっています。
その中で政府は、相場を”急に上げる”よりも、崩さずに整える方向に寄っています。
そのため、投資家側は「市場全体に乗る」より、政策の方向性に合った案件を選ぶのが現実的です。
2026年を左右する2つのニュース:税制と外国人規制
■ 1. キャピタルゲイン課税の開始が延期
まず1つ目は、税制面の動きです。
現地の報道では、不動産取引に関するキャピタルゲイン課税の適用開始が2027年まで延期されたとされています。
ポイントは3つ
- 課税は「なくなった」のではなく「先送り」されただけ
- 2026年中の売却は、従来より税コストを抑えた出口を設計しやすい
- 開発業者は在庫圧力を下げる時間が得られた。その一方で、2027年以降は綿密な出口戦略が必要
では、なぜこのタイミングで延期されたのでしょうか。
背景には、世界的な金利上昇や取引減少が続いており、価格は大きく崩れていないものの「売買が伸び悩む状態」が続いてきました。
そのため、この税制延期は、停滞を和らげる「時間稼ぎ」と捉えるべきでしょう。
■ 2. 外国人居住者の管理強化
一方で、2つ目は規制面の強化です。
2026年1月14日、内務省は移民総局に対し、外国人居住者の滞在管理と出入国管理の強化を指示しました。
具体的な内容
- 外国人の登録・在留資格の確認プロセスを厳格化
- 違法就労や犯罪の温床となりうる住居・施設の定期検査
- 合法的な居住者に対しても、ビザ・居住許可の更新遅れへの厳格な対応
一見「締め付け」に見えますが、実は目的は治安改善と観光・投資への信頼回復です。
近年、国境紛争やオンライン詐欺拠点の存在がイメージ悪化を招き、観光客数や投資家心理に影を落としてきました。
では、この規制強化は不動産ビジネスにどう影響するのでしょうか。
不動産ビジネスの視点では
- 外国人向け賃貸・サービスアパート運営で、KYC(顧客確認)と書類管理の重要性が一段と高まる
- 「適法に登録されたエリア・プロジェクト」に投資が集中しやすくなり、グレーな開発案件は資金調達が難しくなる
つまり、今後は「質的な選別」が進む可能性が高いと言えます。
税制と外国人規制がもたらす具体的インパクト
■ 出口戦略:2026年は「売るなら前倒し」で検討する年
まず、キャピタルゲイン課税の延期により、2026年中の売却は税負担が軽いラストチャンスになり得ます。
たとえば、2017〜2019年にプノンペン中心部のコンドミニアムを購入した投資家の場合、次の2つのシナリオを比較する必要があります。
- 2026年中に売却して税負担を抑える
- 2027年以降も保有し、賃料収入と将来の値上がりに賭ける
どちらを選ぶにしても、為替(ドル建て)と日本円の動きも含めたトータルリターンで再計算することが重要です。
■ 外国人向け住宅・商業不動産:コンプライアンスで差別化
次に、外国人居住者の管理強化により、「書類が整っているプロジェクト」と「そうでないプロジェクト」の格差が拡大するでしょう。
具体的には、次のようなポイントが重要になります。
- 賃貸契約時にパスポート・ビザ情報を適切に取得・保管しているか
- レジデンスカードや一時滞在許可と賃貸契約期間が整合しているか
- 物件オーナーが税務申告・届け出を適切に行っているか
これらが、今後「外国人テナントから選ばれる物件」の条件になります。
特に日本企業が社宅や駐在員用住居を手配する場合も、現地エージェントにコンプライアンス体制を確認することが不可欠です。
■ 金融機関の目線:融資先と担保評価の見直し
さらに、不動産セクターの減速により、銀行は建設・不動産向け融資に慎重姿勢を強めています。
そのため、今後は次のような案件に資金が集中しやすくなるでしょう。
- キャッシュフローが明確な賃貸物件(長期リース契約があるオフィス、実需ニーズの高い住宅)
- インフラ・ロジスティクスと一体となった開発(工業団地、ロジスティクスセンター等)
したがって、日本企業が開発案件に参画する場合、取引先開発業者の資本力と銀行との関係をチェックすべきです。
日本企業・投資家が取るべき戦略
■ 1. 時間軸と規制リスクを織り込んだ投資判断
まず、2026年のカンボジア不動産市場では、3つの時間軸を意識した戦略設計が有効です。
- 短期(〜2026年末)
キャピタルゲイン課税前の出口・再編局面として、保有ポートフォリオの見直しを行う - 中期(2027〜2028年)
課税導入後に想定される価格調整・取引減少を前提に、キャッシュフロー重視の物件にシフト - 長期(2030年以降)
インフラ整備や人口増加を踏まえ、工業団地周辺や新興住宅エリアへの長期投資を検討
■ 2. 現地パートナー選定の「合格ライン」を引き上げる
次に、外国人居住者の管理強化により、開発業者・管理会社のコンプライアンス水準がビジネスの成否を左右します。
パートナー選定時には、次のような点をチェックしましょう。
- テナントの本人確認・在留資格確認のプロセスは文書化されているか?
- 警察・移民当局からの照会や検査への対応フローは整備されているか?
- 税務・法務について、外部の専門家(弁護士・会計士)と連携しているか?
これらに明確に回答できる事業者であれば、2026年以降の規制強化局面でも生き残る可能性が高いと言えます。
■ 3. 日本側での体制整備
最後に、日本企業が社宅手配やオフィス賃借、開発案件への出資を行う場合、日本側でも体制整備が必要です。
- カンボジアの不動産・税制・移民法に関する社内ガイドラインの整備
- 現地拠点や仲介会社からのレポートを四半期ごとにレビューする仕組み
- 世界銀行やIMFなど国際機関の経済レポートを定期確認し、マクロ環境の変化をモニタリング
まとめ:2026年のカンボジア不動産市場で勝つために
改めて整理すると、2026年のカンボジア不動産市場は、税制と外国人規制という2つの大きな流れの中で動いていきます。
- キャピタルゲイン課税の延期という「時間的な猶予」
- 外国人居住者管理の強化という「質的な選別」
まず短期的には、税負担軽減による取引活性化が期待されます。
一方で、コンプライアンスを軽視したプロジェクトや事業者は、徐々に市場から退場を迫られるでしょう。
では、日本企業・投資家にとって何が重要なのでしょうか。
- 2026年中に出口・ポートフォリオ再構成の選択肢を検討すること
- 法令順守と透明性の高いパートナー・案件に絞り込むこと
- 税制・移民規制のアップデートを継続的にフォローすること
これらが、2026年以降のカンボジア不動産ビジネスで生き残るための最低条件になります。
感覚ではなく、最新の政策とデータに基づいた戦略的な意思決定が求められています。
