政府が示した外国人によるカンボジア不動産の所有スキーム
本記事では、カンボジア不動産における外国人所有の考え方について、政府関係者が示した4つのスキームと、直近の投資ニュースをもとに整理します。
結論から言えば、外国人投資家にとって大切なのは「買えるかどうか」ではなく、どの仕組みで持つのかを事前に設計することが重要です。カンボジアでは外国人の土地所有に制限があるため、物件選びと同じくらい、所有スキームの確認が欠かせません。

今回の要点:所有スキームの見える化が進んでいる
2026年4月、カンボジア土地管理・都市計画・建設省の高官が、外国人による不動産取得に使われる4つの法的枠組みを改めて説明しました。これは、まったく新しい制度が始まったという話ではありません。
重要なのは、これまで実務で使われてきた方法が、あらためて整理されたことです。海外投資家にとっては、どの方法なら検討しやすいのかを考える材料になります。
- 外国人が土地を直接自由に所有できるわけではない
- 一方で、実務上使われる複数のスキームが存在する
- 投資判断では、物件そのものだけでなく法務・税務・契約設計も重要になる
つまり、カンボジア不動産投資は「気に入った物件を買う」だけでは進めにくい市場です。どう保有し、どう守り、どう出口を取るかまで含めて考える必要があります。
外国人所有に関する4つのスキーム
■ 1. ノミニーを使うスキーム
ノミニーとは、カンボジア人名義を使って不動産を保有する考え方です。土地付き住宅、ヴィラ、ショップハウスなどで話題に上がることがあります。
ただし、これは非常に慎重に見るべき方法です。名義だけを借りるような形は、後からトラブルになりやすいからです。実務では、長期リース、抵当権、契約書などを組み合わせて、外国人側の権利を守る設計が必要になります。
個人投資家にとっては身近に見える方法ですが、手軽さだけで選ぶべきではありません。信頼できる弁護士や専門家による確認が前提です。
■ 2. ランドホールディング会社・信託
大型の土地や開発案件では、法人を使ったスキームが検討されます。たとえば、カンボジア側と外国側で会社を組成し、契約によって経済的な権利を整理する方法です。
また、信託を活用する方法もあります。こちらは透明性を高めやすく、デベロッパーやファンド、機関投資家に向いた選択肢といえます。
一方で、個人が小さく始めるには少し重い仕組みです。設計コストや管理体制も必要になります。
■ 3. 長期リース
長期リースは、土地を所有するのではなく、長期間借りて使う方法です。カンボジアでは50年程度のリースが話題になることが多く、更新の条件を組み合わせるケースもあります。
ホテル、サービスアパート、商業施設など、長期運営を前提とする事業では検討しやすい方法です。所有権そのものではありませんが、契約内容をしっかり作れば、事業計画を立てやすくなります。
ここで大切なのは、契約期間だけを見ることではありません。更新条件、途中解約、登記、第三者への譲渡なども確認する必要があります。
■ 4. 長期滞在プログラムと組み合わせる方法
富裕層や長期滞在を考える人にとっては、長期滞在プログラムと不動産投資を組み合わせる考え方もあります。たとえば、ビザや滞在資格と、資産保有の仕組みを合わせて検討する方法です。
これは、単なる不動産投資というより、生活拠点、資産保全、海外居住をまとめて考える人向けの選択肢です。短期売買を狙う投資家よりも、長くカンボジアに関わりたい人に向いています。
なぜ今、所有スキームの確認が重要なのか
今回のニュースが重要なのは、カンボジアが外国人投資家に対して、比較的オープンな姿勢を保っていることを示しているからです。周辺国では、外国人の不動産取得に対して、税制や規制を厳しくする動きもあります。
その中でカンボジアは、土地所有に制限を残しながらも、投資家が使えるスキームを整理しています。これは、海外からの中長期資金を受け入れるうえで大切な動きです。
- 投資家が不安に感じやすい法的な論点を整理しやすくなる
- 弁護士、会計士、不動産会社が標準的な提案をしやすくなる
- グレーな方法ではなく、ルールに沿った投資設計が重視されやすくなる
投資家にとっては、これまで以上に正攻法で投資する力が問われる局面といえます。
4.9億ドル規模の投資案件が示す市場の流れ
同じ時期に、カンボジア開発評議会(CDC)が、約4億9,000万ドル規模の新規投資案件を審査していることも報じられました。案件は製造業、農業、再生可能エネルギーなどが中心です。
これらは直接の不動産開発ではありません。ただし、実体経済への投資は、最終的に不動産需要につながります。
- 製造業:工場周辺で従業員住宅や物流施設の需要が生まれやすい
- 農業・加工業:地方部で倉庫、加工場、関連施設の需要が出やすい
- 再生可能エネルギー:インフラ整備を通じて周辺エリアの価値に影響しやすい
このように見ると、カンボジア不動産の注目点は、プノンペン中心部だけではありません。工業地帯、地方都市、インフラ周辺にも目を向ける必要があります。
投資家がまず考えるべきこと
■ 1. どのスキームで持つのかを先に決める
カンボジア不動産投資では、物件を見る前に、所有の仕組みを考えることが大切です。自分が狙う物件によって、使いやすいスキームは変わります。
- コンドミニアム:区分所有を前提に比較的検討しやすい
- 土地付き住宅・ショップハウス:契約保全を含めた慎重な設計が必要
- 開発案件:法人、信託、共同出資などの仕組みを検討する
- 長期滞在型:ビザや生活設計と合わせて考える
同じ不動産であっても、目的が違えば適した形も変わります。何より重要なのは、最初に投資目的を整理しておくことです。
■ 2. 専門家をチームとして組む
外国人がカンボジア不動産に投資する場合、1人で判断するのは危険です。法律、税務、登記、物件管理など、確認すべき項目が多いからです。
実務では、次のような専門家とチームを組むことが重要となります。
- 現地の法律事務所
- 会計・税務の専門家
- 信頼できる不動産会社や管理会社
- 銀行や金融機関
いきなり大きな案件に入るより、小さな相談や調査から始めて、対応の質を見るのが現実的です。
■ 3. 投資ニュースとエリア選定を結びつける
不動産投資では、土地や建物だけを見るのでは不十分です。そのエリアに、どのような産業や人の流れが生まれるかまでを見る必要があります。
たとえば、工場投資が増える地域では、住宅や物流の需要が出やすくなります。再エネやインフラ投資が進む地域では、長期的に企業立地がしやすくなる可能性もあります。
つまり、投資ニュースは単なる経済ニュースではありません。将来の不動産需要を読むためのヒントとして見ることができます。
注意したいリスク
- 名義・契約リスク:名義人との関係や契約内容が不十分だと、後からトラブルになりやすい
- 供給過多リスク:一部の都市部では、コンドミニアムや商業物件の供給が多い
- 出口リスク:買う時は簡単でも、売却や賃貸で苦労するケースがある
- 税務・制度変更リスク:将来の制度変更によって、想定利回りが変わる可能性がある
制度が見えやすくなることは前向きな材料です。ただし、リスクがなくなるわけではありません。むしろ、制度が整理されるほど、投資家側にも正しい理解が求められます。
まとめ
- カンボジアでは、外国人が土地を自由に所有できるわけではない
- 一方で、ノミニー、法人・信託、長期リース、長期滞在プログラムなど、複数のスキームが存在する
- 実体経済への投資拡大は、住宅、物流、商業施設などの不動産需要につながりやすい
カンボジア不動産外国人所有の論点は、単に「買えるかどうか」ではありません。重要なのは、どの仕組みで持ち、どのリスクを取り、どの専門家と進めるかです。
今回のニュースは、制度の見える化が進んでいることを示しています。ただし、実際の投資では個別確認が欠かせません。案件ごとに法務・税務・出口戦略を確認し、無理のない形で進めることが大切です。
