カンボジア投資フォーラム2026が示す不動産市場の今
2026年5月8日、プノンペンのハイアット・リージェンシーで「カンボジア投資フォーラム2026」が開催されました。500人以上が参加した大型イベントです。不動産・株式・金・オルタナティブ投資など、複数の資産クラスにまたがる投資戦略が議論されました。本記事では、フォーラムが提起した投資テーマを整理します。あわせて、カンボジア不動産市場の最新動向もお伝えします。

カンボジア投資フォーラム2026が示した市場の論点
今回の目玉は「50万ドルをどこに投じるか」というパネルディスカッションです。不動産・株式・代替資産などの選択肢のなかで、投資家がどこに目を向けているかが浮き彫りになりました。カンボジア不動産市場は、いまも外国人投資家を惹きつけています。ただし、「どのセクター・エリアを選ぶか」がこれまで以上に重要です。
フォーラムでは、主に以下の論点が俎上に載せられました。
- カンボジア不動産市場における「品質シフト」の加速
- 工業・物流セクターへの資本流入と周辺不動産の需要増加
- アフォーダブル住宅の実需が市場を支えるという構造
重要なのは認識の変化です。「カンボジア全体が成長している」ではなく、「何に投資するかで結果が大きく分かれる」。この見方が投資家の間で共有されてきました。
G.A.T.O. Towerに見る高級不動産の新局面
■ 日本・カンボジア合弁によるBKK1最大級タワー
カンボジア投資フォーラムと並んで注目されたのが、G.A.T.O. Towerプロジェクトです。プノンペン屈指の高級住宅エリア・BKK1(ボエン・ケン・カン1区)で発表されました。日本のMiraku CapitalとカンボジアのLBL InternationalがMOUを締結。総事業費は1億ドル規模で、67階建ての高層タワー建設が明らかになりました。ホテルと高級コンドミニアムを一体開発します。2026年初頭に着工し、2030年の竣工を目指します。
■ 高級不動産が示す市場の「二極化」
G.A.T.O. Towerのような大規模高級開発は、市場の現状を象徴しています。一方では6.4万戸超のコンドミニアム在庫が滞留し、調整が続いています。他方、プレミアム物件にはいまも国際的な需要が集まります。立地・設計・管理の面で差別化できる物件が選ばれているのです。
- BKK1などの高需要エリアでは、価格帯を問わず「品質」が選択基準になっている
- 日系デベロッパーの参入は、設計・管理品質の高さをアピールする機会になりやすい
- 長期保有を前提とした投資家には、完成後の管理体制が重要な選定基準となる
「50万ドルをどこに投じるか」という問いの背景
■ 不動産・株式・代替資産の比較という視点
パネルディスカッションでは、不動産以外の資産クラスとの比較も行われました。2026年現在、カンボジア不動産に対する市場の見方は以下のとおりです。
- 強みとなる点:ドル建て運用・安定インカム・アジア新興市場のポテンシャル
- 注意が必要な点:流動性の低さ・管理コスト・供給過多エリアの空室リスク
- チャンスとなる分野:工業・物流・アフォーダブル住宅・港湾周辺インフラ関連
特に工業・物流分野では、注目すべき動きがあります。カンボジア開発評議会(CDC)が2026年第1四半期に投資プロジェクトを承認しました。その規模は126件・約25億ドル。製造業の流入が続くなか、周辺不動産の中期的な実需が見込みやすい状況です。
■ キャピタルゲイン税の動向と出口戦略
フォーラムでは、出口戦略の重要性もたびたび言及されました。カンボジアでは不動産キャピタルゲイン税(売却益に対する20%課税)があります。本格適用は段階的に延期されてきました。しかし、2027年1月からの導入が視野に入っています。購入時から売却のタイミングと税務処理を計画に組み込む必要があります。
- 売却時の税負担シナリオを複数想定しておく
- 法人スキームの活用で選択肢が広がる場合がある
- 現地税務・法律専門家と連携し、最新の制度を確認する
カンボジアビジネス登録の活況と不動産需要への波及
もう一つの注目データが、2026年の新規ビジネス登録件数です。カンボジアは「シングルポータル」オンライン登録システムを導入しました。その効果が表れています。2026年最初の60日間で、約2,000社・約10億ドルの登録資本が集まりました。この活況は商業用不動産市場にも波及しています。いわゆる「質への飛行」(Flight to Quality)の動きです。
企業が増えれば、オフィス・倉庫・商業施設への需要も生まれます。ただし、どの物件に需要が向かうかは見極めが必要です。供給過多が続くオフィス市場では、立地と管理品質で明暗が分かれる局面が続いています。
まとめ
- カンボジア投資フォーラム2026には500人超が参加し、市場の方向感を議論する場となった
- G.A.T.O. Tower(BKK1・1億ドル・67階建て)は、品質で差別化できる物件への需要を示している
- 工業・物流セクターへのCDC承認案件増加は、周辺不動産の実需を中期的に支える材料となる
- キャピタルゲイン税の動向は、投資計画の前提として引き続き確認が必要
2026年のカンボジア不動産市場では、3つの視点が投資成果を左右します。「どのセクターを選ぶか」「どう運営・管理するか」「いつどのように出口を取るか」です。フォーラムで示されたような多角的な視点を持ちましょう。そして、慎重かつ積極的な判断を心がけたいところです。
(参考:Realestate.com.kh、Cambodia Investment Review、Realestate.com.kh(G.A.T.O. Tower))
