国境緊張が問う「不動産リスク」——いま織り込むべき3つの視点
2025年12月、カンボジア不動産市場は揺れています。その理由は、国際情勢によるリスクと税制優遇という、両面の要素が影響しているためです。そこで、直近1週間でカンボジア不動産に影響のある主なニュースをまとめます。さらに、投資家が実践すべき対策を詳しく解説します。
直近1週間でカンボジア不動産に影響のある主なニュース|国際情勢リスクと税制優遇
■ 12月2日|税制優遇の継続
● 2025年分の不動産税(TOIP)申告・納付期限が延長
2025年分の不動産税(TOIP:カンボジアの固定資産税)の申告・納付期限が12月31日まで延長されました。また、一定条件で追加の罰金が免除されます。これにより、投資家にとって資金繰りや取引手続きに追い風となっています。さらに、不動産取引の手続きもスムーズになります(参考:DFDL)。
※不動産税(TOIP)とは、カンボジアで不動産を所有している場合に毎年支払う税金のことです。今回、未登記物件の遡及登録に対する罰金免除が明示されたことにより、行政手続きの透明性向上が期待されます。
■ 12月4日|住宅取得の課題
● 首都の住宅取得難が続く
カンボジアの首都プノンペンでは、住宅を購入することが難しくなっています。その理由として、家計への負担が大きいことや、都市計画上の課題が指摘されています(参考:Cambodianess)。

■ 12月5日|市場見通し
● CBRE見立て—プノンペンの主要セクターは2025年も横ばい基調
世界有数の不動産コンサルティング会社であるCBREの分析によると、プノンペンの主要な不動産市場は2025年も大きく変動しない見込みです。一方で、工場や倉庫などの工業用不動産の需要は堅調です(参考:Thailand Construction & Engineering News)。
■ 12月8〜9日|カンボジア不動産投資における国際情勢リスクの再燃
● タイ・カンボジア国境の戦闘が再燃
タイとカンボジアの国境付近で衝突が再び発生しました。その結果、空爆の報道や住民の避難が拡大しました(参考:Reuters、AP News)。短期的には、投資家の心理に影響を与える可能性があります。さらに、国境を越えた物流や観光の回復にも悪影響が出る可能性があります。
一方で、こうした国際情勢によるリスク(地政学リスク)は、適切に対応すれば投資の機会にも変えられます。特に、プノンペンでの不動産投資においては、リスクを減らす対策(リスクヘッジ)を考えることが重要です。
カンボジア不動産投資における国際情勢リスク対策
国際情勢によるリスク(地政学リスク)が高まっています。カンボジア不動産投資においては、以下の3つの対策が有効です。
■ 投資家が実践すべき3つの対策
① 契約条項の見直し
不動産の開発や賃貸に関する契約書に、材料の調達が遅れた場合や国境が閉鎖された場合の対応を明記します。これは「不可抗力条項(フォースマジュール条項)」と呼ばれます。また、材料を別の方法で調達できるようにする条項(代替調達条項)も追加することで、リスクを軽減できます。
② 収益の分散化
不動産からの収益を、複数の地域や複数の入居者(テナント)に分散させます。輸出に依存する企業よりも、国内の需要に支えられる業種(スーパーマーケットなどの生活必需品の小売、医療、教育など)の入居者の割合を高めます。これにより、国際情勢の影響を受けにくくなり、安定した収益を確保できます。
③ 用途の多様化
重要な物流拠点としての機能や、長期滞在する人向けの宿泊施設(サービスアパート)など、多様な用途に対応できるようにします。空室を減らすことで、安定した収益を確保する戦略が有効です。
■ 資金のやりくり対策としての税制優遇活用
また、資金のやりくりには、2025年の不動産税の申告・納付期限が延長されたことを活用することも有用です。そのため、支払いの期日を管理し、手元に十分な資金を確保することで、市場が回復する局面に備えることが重要です。
まとめ|カンボジア不動産投資における国際情勢リスク管理が鍵
タイ・カンボジア国境の国際情勢によるリスク(地政学リスク)は、短期的には投資家の心理に影響を与える可能性があります。
そのため、契約条項の見直しや収益の分散化などが重要です。リスクを減らす対策(リスクヘッジ)を考える視点を持ちましょう。
次に、2025年の不動産税(TOIP)の申告・納付期限が延長されました。これにより、資金のやりくりの余裕が生まれました。
それにより、投資を判断する時間的な余裕ができました。より慎重に検討することが可能になっています。
さらに、プノンペンの不動産市場は大きく変動しない見込みです。また、工場や倉庫などの工業用不動産の需要は堅調です。
一方で、住宅を購入することが難しいという課題もあります。そのため、投資の機会とリスクの両面を理解した上での判断が求められます。
引き続き、国際情勢によるリスクや市場の動向を継続的に確認しながら、リスク管理を徹底することが重要です。その結果、これがカンボジア不動産投資を成功させる鍵となるでしょう。
ぜひ、最新情報に注目しながら、慎重かつ戦略的な投資判断を行っていきましょう。
