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カンボジア不動産:税制優遇が呼ぶ資本シフトと押さえるべき論点

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本記事では、2026年のカンボジア不動産投資において顕在化しつつある「周辺国からの資本シフト」に焦点を当てます。カンボジアでは、税制優遇と外国人に開かれたフリーホールド市場というポジションが、投資マネーを呼び込んでいます。シンガポールやバンコクなどからの資本シフト(利回り回転(Yield Rotation))が進んでいるという見方です。

一方で、ガバナンス強化の動きや、リスクも無視できません。本記事では、日本企業・投資家が押さえるべき論点を解説します。

2026年の不動産投資:資本がカンボジアにシフトする構図

2026年は、「政策面の追い風」と「リスクの再評価」が同時に進む一年になります。

直近の動きとして注目されるのは、次の二点です。

第一に、ロンドン発のプレスリリースで、大手不動産プラットフォームRiel Propertyが、カンボジアを「2026年の最後のフリーホールド・フロンティア」と位置づけた点です。シンガポールやバンコクでは税制・規制が強化されています。その中で、利回りを求める投資マネーがカンボジアへ回り始めているという見方が示されています。

第二に、カンボジア政府が不動産取引に対するキャピタルゲイン税(CGT)の導入を2027年1月1日まで再延期した点です。これにより、政府が不動産市場の回復を引き続き重視している姿勢が明確になりました。

これらの動きが示すのは、海外投資家に開かれた所有権と相対的に軽い税負担が維持される点です。少なくとも2026年までは続く見込みです。周辺国が不動産投資へのハードルを高める中で、カンボジアはオープンな市場としての存在感を強めています。

キャピタルゲイン税・印紙税猶予と未利用地税(TUL)

■ キャピタルゲイン税・印紙税の延期

キャピタルゲイン税の再延期に加え、不動産取得時に課される印紙税(スタンプデューティー)についても、一定価格帯までの免税枠延長が発表されています。これは、一次取得者やミドルクラス向け住宅の需要を下支えする狙いがあります。

取引低迷が続いた市場に対し、急激な制度変更によるショックを避ける政策ともいえます。時間をかけて正常化を図る狙いがあります。

■ 未利用地税(TUL)が示す土地政策の転換

一方で、2025年からは未利用地税(Tax on Unused Land:TUL)の新ルールが段階的に導入されています。これは投機目的の土地保有を抑制し、実際の活用や開発を促す制度です。

  • 一定面積(5ヘクタール)未満の土地は原則課税対象外
  • 農業利用・経済活動への活用・リースアウト・特別経済区(SEZ)内などの条件を満たせば、5ヘクタール超でも免税

この制度により、「ただ保有して値上がりを待つ土地」にはコストが発生する構造が明確になりました。土地投資では、活用計画や事業性がこれまで以上に問われる局面に入っています。

資本シフトが向かう先:工業団地・物流施設への間接投資

Riel Propertyのレポートでは、完成済みで賃貸実績のある都心コンドミニアムへの資本集中が続くと指摘されています。一方で、もう一つ見逃せないシフト先が、工業団地や物流施設です。

APS Cambodiaの報道によると、2025年のカンボジア貿易総額は約640億ドルに達しました。前年比16.8%増です。特に中国との二国間貿易は約197億ドルに拡大し、機械や建材の輸入増が目立っています。

これは、製造業と物流セクターが引き続き成長していることを示しています。工業団地や物流倉庫への需要増加が、不動産需要にも波及していると考えられます。

個人投資家が直接参入しにくい分野ではありますが、

  • 工業団地デベロッパーへの出資や合弁
  • 物流施設を保有するファンドやREITを通じた間接投資
  • BTS(Build-to-Suit)型の長期賃貸開発

といった形で関与する余地はあります。現地法人設立や事業戦略とセットで検討する分野といえるでしょう。

無視できないリスク:スキャンダルとガバナンスンスと「政策の窓」

■ スキャンダル・ガバナンスリスクと不動産

税制や市場リスクに加え、ガバナンスなどの問題も冷静に見る必要があります。

2026年初頭、オンライン詐欺に関与したとされる複数のコンパウンドから、多数の労働者や人身取引被害者が解放されたと報じられました。さらに、関連が疑われていた有力財閥のトップが逮捕・送還されました。同グループ傘下の銀行が清算手続きに入ったとの報道もあります。

これらは、一部の不動産開発や金融セクターが、違法行為と結びついていた可能性を示唆しています。投資家としては、次の点をより厳しく確認する必要があります。

  • デベロッパーや金融機関の最終支配者(UBO)まで含めたデューデリジェンス
  • AML(資金洗浄対策)や制裁リスクを巡る国際的な規制動向
  • 特定グループへの依存を避けた銀行・管理会社の分散

まとめ:資本シフトと「政策の窓」をどう読むか

2026年のカンボジア不動産投資を整理すると、次の点が重要です。

  • 周辺国からの利回り回転により、投資マネーはカンボジアへ向かっている
  • 印紙税猶予と未利用地税が並走している。「取得は容易、保有は実需重視」という政策設計が進んでいる状況
  • 実体経済と連動する不動産分野が中長期の投資対象として浮上している。具体的には、工業団地・物流などが挙げられる。
  • スキャンダルを背景としたガバナンス・リスクの見極めは不可欠

税制優遇が続く「政策の窓」を活かすには、短期的なメリットだけに飛びつくのはリスキーです。2027年以降の課税や市場構造も見据えた戦略設計が求められます。
カンボジアの制度変化を継続的に追い、一歩先を読んだ意思決定を行うことが必要です。

(参考:EIN PresswireKampuchea Thmey DailyPwC Cambodia

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