カンボジア不動産2026:CGT延期が生む選別投資の戦略
本記事では、2026年のカンボジア不動産市場で日本企業・投資家が取るべき戦略を整理します
2025年のカンボジア市場の成長率は0.5%であり、市場全体は伸び悩んでいるように見えます。
その一方で、より細かく分析すると、住宅分野は堅調に推移していることがわかります。さらにプラスの要素として、不動産へのキャピタルゲイン税(以下CGT)の適用が2027年へ延期されました。CGTとは、売却益にかかる税金のことです。この延期により、2026年は物件を選んで投資する好機となっています。

カンボジア不動産市場2026の現状と結論
2026年2月時点の状況を見ると、カンボジアの不動産市場は二極化しています。全体では伸び悩む一方、分野によって明暗がはっきり分かれているのです。CGTの延期により、2026年は税制面で猶予があります。じっくり物件を選んで投資しやすい環境です。
2025年の統計から全体像を確認しましょう。カンボジア中央銀行の集計によると、不動産分野の成長率は0.5%でした。前年の0.9%からさらに減速した形です。ただし、すべての分野が弱いわけではありません。
■ カンボジア不動産市場の「減速」と「二極化」
2025年のデータを分野別に見ると、次の傾向があります。
- 住宅(ボレイやタウンハウスなど)の販売件数:約30%超の増加
- コンドミニアムの販売件数:約20%近い減少
- 住宅価格:全国平均で約3%の下落
プノンペンでは、やや大きめの下落となりました。
つまり、需要は手頃な価格帯の住宅にシフトしています。高級コンドミニアムは供給過多で、価格調整が進行中です。
一方、ボレイ(カンボジア式の分譲住宅地)やタウンハウスは実需に支えられています。「住みたい人が実際に買う」需要が底堅いのです。物件の種類によって明暗が分かれる二極化が鮮明になってきました。
■ 地政学リスクと不動産市場への影響
2025年にはカンボジアとタイの間で緊張が生じました。年後半には市場心理が冷え込み、不動産取引にも影響が出ています。カンボジアの不動産市場は、隣国との関係や外部環境に敏感です。
短期的な価格変動は避けられません。しかし、長期で見ればインフラ整備や都市化は進んでいます。調整局面でどう動くかが、将来のリターンを左右します。
キャピタルゲイン税(CGT)延期のインパクト
2026年1月に最新の税務通知が出ました。不動産市場への影響を整理します。
■ CGT(キャピタルゲイン税)とは何か
CGTとは、資産の売却益に課される税金です。正式名称はCapital Gains Taxといいます。カンボジアでは、株式やリース権、知的財産などに一律20%の税率が適用されます。この枠組みは段階的に整備されてきました。
当初は不動産にも順次CGTを導入する計画でした。しかし、影響が大きいため当局は実施時期を繰り返し先送りにしています。
■ 不動産へのCGT適用は2027年に再延期
2026年1月2日付の通知(Notification 041)で、税務総局は次の内容を公表しました。
- 不動産以外の資産へのCGT適用開始:2026年1月1日
- 不動産(土地・建物)へのCGT適用開始:2027年1月1日に再延期
よって、不動産の売却益へのCGTは延期され、2026年末まではかかりません。
この延期は、投資家にとって次の意味を持ちます。
- 2026年中に売却すれば、CGTなしで利益を確定できる
- 長期保有の投資家も、購入価格の交渉や売却計画を見直す余裕が生まれる
2026年に取るべき3つの投資戦略
市場の現状とCGT延期を踏まえた戦略を整理します。日本を含む海外投資家や現地事業者が検討できる内容です。
■ 戦略1:手の届く価格帯の住宅に集中する
2025年、ボレイや戸建て住宅の販売は大きく伸びました。カンボジアでは、現地の人が実際に住むための住宅が成長の原動力です。こうした手の届く価格帯の住宅は「アフォーダブル住宅」と呼ばれます。
投資家の視点では、次のアプローチが考えられます。
- 郊外の新興エリアで、ボレイ開発案件に出資する
- 現地の開発業者と共同事業を組む。土地取得は現地側、設計は外国資本が補う形が一般的
- 既存プロジェクトの区画をまとめて購入し、販促で付加価値を高める
この種の案件は平均価格が比較的低いです。「住むために買う」実需に支えられ、底堅さがあります。ただし、大幅な値上がりは期待しにくい面もあります。そのため、賃料収入や分譲の回転で着実に稼ぐ設計が現実的です。
■ 戦略2:コンドミニアムの調整局面を逆に活かす
コンドミニアム市場は販売減少と価格下落に直面しています。短期的にはマイナスに映るでしょう。しかし、カンボジアには中長期の追い風があります。都市化の進行、若い人口構成、オフィス需要の拡大です。今の下落は「仕込みの好機」とも捉えられます。
たとえば、次のような戦略が考えられます。
- 売れ残りのコンドを割安で一括取得する。内装を改装し、長期賃貸に転用する
- 管理品質が低い物件を買い取り、運営会社を入れ替えて賃料と入居率を改善する
- 観光回復を見越して、都市中心部の物件を中長期で仕込む
価格が下がっている局面だからこそ、事前調査が重要です。物件の権利関係や建物の状態は必ず確認しましょう。こうした事前精査をデューデリジェンスと呼びます。チェックリストなども参考にしてください。
■ 戦略3:CGT開始(2027年)を見据えた売却計画の見直し
2027年以降は売却益に20%のCGTが課される可能性が高いです。そのため、2026年は売却計画を見直す重要な1年です。「税金を引いた後の手取り」を前提に考えましょう。
具体的には、次のポイントを検討します。
- 保有期間の見直し:短期転売の案件は、2026年中に売却できるか再確認する
- 法人(SPV)の活用:物件を直接売るのではなく、保有法人の株式を譲渡する方法も検討する
- 資金計画の再設計:借入比率や配当方針を見直し、税引後の収益率が最大化するよう調整する
こうした税務シミュレーションは、現地の専門家と連携して進めましょう。各社がCGT対応ガイドを公開しています。最新の解釈を確認しておくことが大切です。
分野別チェックポイント
不動産投資や事業参入を検討する方向けに、分野ごとのポイントを整理します。
- 手の届く住宅(ボレイ等):販売件数が大きく増加中。実需中心で底堅い。分譲・賃貸のいずれも検討価値あり。
- コンドミニアム:販売減少・価格調整中。供給過剰なエリアもある。割安物件を選別し、価値を高める戦略が有効。
- 商業用不動産(オフィス・店舗):立地で状況が大きく異なる。大型テナントの確保が成否を左右する。
- 工業用・物流用不動産:物流拠点としてのニーズが継続。経済特区や幹線道路沿いに注目。
どの分野でも、現地の最新データの把握が不可欠です。マーケットレポートやニュース記事を定期的にチェックしましょう。
まとめと今後の視点
■ この記事のまとめ
- 2025年の成長率は0.5%と鈍化。ただし手頃な住宅は堅調で、二極化が進んでいる
- 不動産へのCGT適用は2027年1月まで延期。2026年は税制面で猶予がある
- 2026年のカギは3つある。①手頃な住宅への集中、②コンド調整局面の選別投資、③CGTを織り込んだ売却計画
■ 今後1〜2年で注視すべきポイント
- 周辺国(特にタイ)との関係や地域情勢の変化
- 延期したCGTの具体的なルール(控除の範囲や評価方法)の公表
- インフラ開発や経済特区の進み具合
- 観光業の回復と外国人居住者の増減
カンボジアの不動産市場は、まだ規模が小さい市場です。しかし、将来の伸びしろは大きいといえます。調整期の今こそ、データと制度を丁寧に読み解きましょう。現地パートナーとの関係を築くことも大切です。中長期の成長を先取りするチャンスといえるでしょう。会社設立や投資の仕組みづくりについては、現地ガイドもあわせてご確認ください。
