SEZ(特別経済区)拡大がもたらすカンボジア不動産投資への影響
本記事では、2026年のカンボジア不動産投資に影響する2つのテーマを解説します。
1つ目は、シハヌークビルの物流・工業ハブ化マスタープランです。
2つ目は、新たに承認された3つの特別経済区(SEZ)です。いずれも工業・物流系不動産と周辺住宅の需要を中長期で押し上げる可能性があります。一方で、国境情勢などの地政学リスクも浮上しています。

物流ハブ×SEZ拡大の二大テーマに注目
2026年のカンボジア不動産投資は「価格勝負」ではありません。インフラ(物流ハブ)×SEZ(産業集積)×住宅(ワーカー・駐在員向け)の三位一体戦略を構築できるかどうかが、成果を分ける年になります。
まず、押さえておくべきポイントは次の2つです。
- ① シハヌークビル物流ハブ化構想:日本とカンボジアが、シハヌークビルを地域物流・工業ハブに変革する包括的なマスタープランを推進中。港湾拡張、輸送ネットワーク強化、サプライチェーン効率化が柱。
- ② 新SEZ3件を含む大型投資の承認:2026年1月だけで43件・約7.52億ドルの投資案件を承認。そのうち3つが新たな特別経済区(SEZ)で、合計約2.6万人の雇用創出が見込まれている。
つまり、どちらも「工業用地・物流施設・従業員向け住宅」の需要を直接押し上げるテーマです。したがって、投資の注目ポイントは首都プノンペン中心からシハヌークビルや新SEZ周辺の地方都市へ分散しつつあります。
シハヌークビル物流ハブ化と不動産への波及
■ マスタープランの概要
カンボジア政府と日本は、シハヌークビルを地域物流・工業ハブとして再構築する包括的なマスタープランを策定しています。具体的には、次の内容が含まれています。
- 港湾能力の増強:コンテナ取扱量の拡大
- 内陸部への輸送インフラ改善:道路・鉄道との接続強化
- サプライチェーン効率化:物流拠点の計画的な整備
この計画が本格実行段階に入れば、不動産市場にも明確な影響が出ます。
■ 不動産市場への影響
物流ハブ化が進めば、次のような需要が生まれます。
- 工業用地・倉庫用地の需要増加:輸出加工や組立産業の集積に伴い、港湾近郊の工業団地へのニーズが高まる
- ワーカー向け住宅・サービスアパートの整備:雇用増加により、シハヌークビル周辺で低〜中価格帯の住宅需要が拡大
- 長期的な地価上昇圧力:交通インフラ整備と産業集積が進むエリアでは、じわじわと地価が上がるパターンが多い
なお、カンボジアの住宅価格指数を見ると、2年間の名目上昇率は+1.49%です。周辺国と比べて落ち着いた伸びにとどまっています。そのため、インフラ起点の成長ポテンシャルがあるエリアを今のうちに仕込んでおける余地があるとも言えます。
新SEZ承認が生む不動産チャンス
■ 2026年1月の承認内容
カンボジア開発評議会(CDC)は2026年1月だけで43件・約7.52億ドルの投資案件を承認しました。そのうち3件が新たな特別経済区(SEZ)です。合計で約2.6万人の雇用創出が見込まれています。
SEZ(Special Economic Zone)とは、税制優遇やインフラ整備が集中する工業団地・産業集積エリアのことです。多くの場合、次のような不動産ニーズを同時に生み出します。
- 工場建屋・物流倉庫などの産業系不動産
- 従業員・管理者が住む近隣住宅地・アパート
- 日系・外資企業向けのオフィス・サービスアパートメント
- 飲食・小売・サービスなどの商業施設
つまり、新SEZの位置と周辺インフラは「次のホットスポット」を見極めるための重要な指標となります。
■ SEZ周辺で狙える投資パターン
CDCが承認した新SEZの多くは、首都プノンペン以外の地方に位置しています。こうしたエリアでは、次のような投資機会が考えられます。
- 中低価格帯アパートの長期賃貸:工場ワーカー家族向け
- マンスリー契約のサービスアパート:外資系企業の駐在員・出張者向け
- 道路沿いの商業ユニット:小売・飲食・日用品店用
高級コンドミニアムだけでなく、こうした「産業系×住宅系」の組み合わせを検討することで、景気サイクルに左右されにくい安定キャッシュフローを目指せます。
投資家が取るべき具体的な戦略
■ 事例:物流企業によるシハヌークビル投資
たとえば、ある日本の中堅物流企業が東南アジアでの拠点拡大を検討しているとします。シハヌークビルを選択した場合、次のようなステップが想定されます。
- まず、港湾近接の倉庫用地・工業団地をリースまたは購入する。マスタープランの進捗を見ながら判断する
- 次に、倉庫近隣で従業員向けの賃貸アパートに投資する。事業と不動産収益を組み合わせたポートフォリオを構築する
- さらに、現地デベロッパーとJV(共同事業体)を組む。規制対応や行政手続きのリスクを軽減するためだ
このように、事業投資と不動産投資を一体で設計することで、為替や需要変動に対するリスクヘッジにもなります。
押さえておきたいリスクと対策
■ 国境情勢・地政学リスク
一方で、リスクにも目を向ける必要があります。2026年初頭、カンボジアとタイの国境紛争が経済成長リスクとして浮上しています。内務省は2月初旬の停戦後、数十万人規模の避難民の帰還状況について複数回の発表を行っています。
ただし、このリスクは主に国境付近の観光・商業不動産に影響しやすい傾向があります。首都圏・沿岸部の工業・物流系不動産への影響は限定的という見方もあります。それでも、投資家は次の点を意識すべきです。
- 国境近接エリアへの投資は、用途・テナント構成を慎重に検討する
- 政治・治安リスクのニュースフローを定期的にチェックする
- 万一の混乱時に備え、ローン比率を抑えた保守的なレバレッジを意識する
■ 規制・税制の変更リスク
カンボジアは投資誘致のため、印紙税や土地税の優遇策を講じることが多いです。しかし、それらは期限付きであることがほとんどです。スタンプデューティーの減免や未利用土地税の見直しなど、ここ数年で制度変更も相次いでいます。
そのため、次の点を必ず確認しましょう。
- 優遇措置の適用範囲(価格・物件種別・期間)を専門家に確認する
- 優遇が終了した場合のキャッシュフロー・利回りシミュレーションも行う
- ローカル税理士・弁護士とのネットワークを確保しておく
「制度前提の変化」に備えたリスクマネジメントが不可欠です。
まとめ:2026年は「三位一体戦略」で差がつく
最後に、本記事のポイントを整理します。
- まず、日本との連携によるシハヌークビル物流ハブ化は、港湾近郊の工業用地・物流施設・ワーカー住宅の需要を押し上げる可能性が高い
- 一方で、2026年1月に承認された3つの新SEZと43件の投資案件は、地方都市を含む新たな産業集積を生み出し、周辺の住宅・商業不動産にも波及効果が期待できる
- さらに、住宅価格の上昇率はアジアの中で落ち着いており、中長期での仕込み期と捉える余地がある
- ただし、国境紛争などの地政学リスクや税制変更リスクには注意が必要。エリア分散と保守的なレバレッジが重要になる
これからカンボジア不動産投資を検討する方にとって、2026年はインフラ×SEZ×住宅の三位一体戦略を構築できるかどうかが勝負です。ニュースと政策の動きを丁寧に追いながら、自社の事業戦略とシナジーのある形でポートフォリオを組み立てていきましょう。
(参考:APS Cambodia、The Phnom Penh Post、Global Property Guide、Open Development Cambodia)
