カンボジア不動産:新REITガイドラインとCM2Hが生むビジネスチャンス
本記事では、2026年初頭のカンボジア不動産市場を動かす2つのテーマを解説します。1つ目は、SERC(証券監督当局)によるREIT型ファンドの新ガイドラインです。2つ目は、CM2H(Cambodia My Second Home)プログラムの拡充です。どちらも不動産ビジネスの入り口を広げる動きといえます。

制度化と居住ニーズ拡大で市場は次のフェーズへ
2026年のカンボジア不動産市場は新しい成長フェーズに入りつつあります。背景にあるのは「制度の透明性向上」と「居住ニーズの創出」です。開発ラッシュ後の在庫調整で減速していた市場に、構造的な追い風が吹き始めています。
まず、押さえておくべきポイントは次の2つです。
- ① 不動産ファンド新ガイドライン:SERCがファンドのユニット発行ルールを公表。投資配分やレバレッジ、分配義務を明確化した。REIT市場の土台作りが進んでいる。
- ② CM2Hプログラムの拡充:5万米ドルからの不動産投資で最長10年の居住ビザを取得可能。市民権への道も開かれる。セカンドホーム需要の受け皿として注目度が高い。
つまり、機関投資家マネーと個人富裕層の購入が同時に進む構図です。どのポジションで市場に関わるかを早く見極めた投資家ほど、先行者利益を得やすい局面です。
不動産ファンド新ガイドラインの中身と影響
■ SERCが定めた主要ルール
2026年1月19日、SERCが新ガイドラインを発行しました。正式名称は「不動産投資ファンド・ユニット発行ガイドライン」です。これまで曖昧だったファンドの枠組みを一気に明確化した内容です。主なルールは次の通りです。
- 投資配分:資産の65%以上を賃料収入等を生む不動産に投資
- リスク管理:建設中不動産への投資は資産総額の10%まで
- レバレッジ上限:借入は資産総額の35%まで
- 分配義務:純利益の90%以上を投資家に分配
- 第三者評価:SERC認定の評価者が6ヵ月以内に出した評価額を使用
これらはシンガポールREIT等の基準に近い水準です。海外投資家にとって馴染みやすいガバナンスが整いつつあります。日本の投資家も、東証REITの規程と比較しやすくなるでしょう。
■ ファンドが投資できる資産の範囲
もう一つ注目すべき点があります。ファンドの投資対象は国内に限りません。カンボジア国外の不動産や関連株式・債券も対象です。
そのため、ASEAN域内の物件を組み合わせた地域横断型ポートフォリオも組成可能です。運用者にとって大きな自由度と言えます。
CM2Hプログラムが不動産需要に与えるインパクト
■ CM2Hの主な特徴
CM2Hは不動産投資×長期居住ビザを組み合わせた移住プログラムです。
2026年2月15日時点の主な特徴は次の通りです。
- 最低投資額:承認済み不動産プロジェクトへの5万米ドル以上
- ビザ:最長10年の居住ビザ(更新可)。5年後に市民権申請が可能
- 条件:言語・居住日数・学歴の要件なし。身元要件が中心
- 投資先例:ラ・ビスタONEやタイムスクエア等の承認プロジェクト
シンガポールやマレーシアMM2Hと比べると、投資額のハードルが低いのが特徴です。つまり、「セカンドホームを持ちたい」層の受け皿として価格競争力があるといえるでしょう。
■ 不動産需要への波及効果
CM2Hの普及により、長期滞在外国人向けの住宅需要が高まる見込みです。特にプノンペン中心部やシアヌークビルでは、コンドミニアムやサービスアパートメントへの需要が底支えされるでしょう。
具体的には、次のようなニーズが想定されます。
- ASEAN各国を行き来するビジネス拠点として利用
- 子女の通学拠点としてコンドミニアムを保有
- 老後のロングステイ先として長期滞在
開発事業者にとっては「CM2H適格」の認定取得が重要です。認定の有無で海外購入者の反応が大きく変わります。
機関投資家・富裕層それぞれのビジネス機会
■ 機関投資家向け:REIT・不動産ファンドの組成機会
新ガイドラインで、投資のスタイルが変わります。個別プロジェクトへの直接投資から、ファンド経由のポートフォリオ投資へ。たとえば次のモデルが考えられます。
- 日系デベロッパー:現地パートナーと共同でファンドを組成。オフィスや物流施設を組み込み、機関投資家から資金を調達
- 金融機関・証券会社:カンボジア不動産を組み入れたオルタナティブ投資商品を企画
- 既存ファンドの出口戦略:完成済み物件を新設ファンドに売却し、流動性を確保
■ 富裕層個人向け:CM2Hを起点にした居住・投資ソリューション
CM2Hは単なるビザ商品ではありません。不動産パッケージとして設計された移住プログラムです。次のようなビジネスモデルが考えられます。
- CM2H物件と資産運用を組み合わせた資産防衛プランの提案
- 富裕層向けセミナーの開催。税制・ビザ・教育情報をセットで提供
- 口座開設・会社設立・信託等を含むワンストップ・サービスの構築
最新条件はHarvey Law Group等の一次情報で必ず確認してください。
キャピタルゲイン税を踏まえたストラクチャー設計
■ 2026年からの新しい税制環境
もう一つ見逃せない動きがあります。2026年1月から、不動産売却益に20%のキャピタルゲイン税が適用されています。一方で、住宅用不動産の一部は印紙税が2026年末まで免除されています。
いまは税制・ファンド・ビザ制度が相互に影響し合う時代です。そのため、プロジェクトごとに最適なストラクチャー設計が求められます。
■ 具体的なストラクチャーの考え方
税制変更を踏まえると、たとえば次のような工夫が必要です。
- 長期保有案件はインカム税重視のファンド設計にする
- 短期転売案件は税負担込みのIRRシミュレーションで出口価格を調整
- 印紙税免除対象の住宅は総コスト削減メリットを前面に販売
適用条件は頻繁に変わる可能性があります。現地の税務アドバイザー(Andersen in Cambodia等)への確認が不可欠です。
実務的チェックリスト
■ 法務・税務デューデリジェンス
投資を具体的に進める際は、以下の項目を確認しましょう。
- 対象物件の所有権・抵当権・リース権の確認
- CM2H対象の場合、政府承認ステータスのチェック
- ファンド投資の場合、ガイドライン準拠の運用ルールの確認
- 各種税を織り込んだ税後キャッシュフロー分析
■ パートナー選定とガバナンス構築
さらに、ガバナンスとコンプライアンスの体制づくりも重要です。投資詐欺やマネロン事案を背景に、当局の監視は強まっています。
たとえば以下の対策が必要です。
- デベロッパーの実績・財務・コンプライアンス体制を確認
- 独立したアセットマネージャーやバリュエーターの起用を検討
- AML/CFTに関するKYCプロセスの整備
「安さ」だけでは不十分です。何よりも、ガバナンス重視の姿勢が信頼を勝ち取る鍵になります。
まとめ:「制度化」を味方につけた投資戦略を
最後に、本記事のポイントを整理します。
- まず、ファンド新ガイドラインでREIT型の仕組みが整いつつある。機関投資家の参入障壁が下がっている
- 一方で、CM2Hプログラムが富裕層の新たな選択肢に。居住系不動産の需要底上げが期待できる
- さらに、税制変更が進んでおり、案件ごとの最適設計が不可欠になっている
- ただし、ガバナンスとコンプライアンスの重要性が高まっている。パートナー選定が成否を分ける
成功の鍵は3つあります。まず、制度・税制の最新情報をキャッチアップする情報網。次に、ファンド・ビザ・税務を横断的に設計できるチーム。そして、中長期視点でのポートフォリオ構築です。短期転売より、賃料収入と資本成長の組み合わせを重視しましょう。
(参考:Sithisak Law Office、Harvey Law Group、Andersen in Cambodia)
