カンボジア不動産:2026年の税優遇とコンプライアンス強化のチャンス
本記事では、2026年のカンボジア不動産市場を左右する3つのテーマを解説します。1つ目は、キャピタルゲイン税(CGT)の不動産適用が2027年に延期されたことです。2つ目は、住宅向け4%印紙税免除の延長です。加えて、プリンス・グループの販売停止という制裁事案も取り上げます。

投資に追い風と警戒感が同時に強まる年
2026年はラストチャンスとガバナンス強化が重なる年です。
具体的には、次の3つが同時に進んでいます。
- ① CGTの不動産適用延期:不動産売却益への20%課税は2027年から。つまり、2026年中の売却には猶予がある
- ② 印紙税免除の延長:条件を満たす住宅は4%の印紙税が2026年末まで免除。そのため、一次取得者の負担が軽くなる
- ③ 制裁リスクの顕在化:プリンス・グループの高級案件で販売停止。したがって、透明性の低い案件は淘汰される流れにある
つまり、数字だけ見れば買い手に有利な市場です。しかし、誰から・どの案件を買うかの見極めが重要になっています。
キャピタルゲイン税の不動産適用は2027年へ
■ 延期の中身とポイント
カンボジア政府はCGTの不動産適用を再延期しました。具体的には、2027年1月1日まで猶予が設けられています。ポイントは次の通りです。
- まず、リースや知的財産には2026年からCGTが適用開始されている
- 一方で、不動産の売却益は2026年中は旧ルールが維持される
- なお、当局は「1年の猶予」を通達で明示している
そのため、海外投資家の間では「2026年は利益確定のウィンドウ」と言われています。つまり、既存物件の売却やポートフォリオの組み替えを検討する好機です。
住宅4%印紙税免除の延長
■ 免除の条件と対象
もう一つの注目ニュースが印紙税免除の延長です。具体的には、住宅向け4%の印紙税が2026年末まで免除されます。これは2024〜2025年の時限措置を引き継ぐ形です。
主な条件は以下の通りです。なお、詳細は必ず現地の専門家に確認してください。
- 対象物件:ボレイまたは登録済みコンドミニアム内の住宅
- 価格条件:物件価格が21万ドル以下
- 買主:初めて住宅を取得する個人であること
- 登録:政府登録済みデベロッパーからの一次取得
通常、所有権移転には評価額の4%がかかります。そのため、この免除は一次取得者にとって大きなメリットです。
2つの税制ニュースが投資戦略をどう変えるか
■ 2026年は「売却ウィンドウ」と「仕込み期」が重なる
では、CGT延期と印紙税免除をどう活用すべきでしょうか。結論として、2026年の戦略は立場ごとに異なります。
- 既存物件の投資家:2027年のCGT課税を見越し、2026年中に一部を売却する。つまり「出口戦略の最適化」がテーマ
- 住宅デベロッパー:印紙税免除を訴求し、一次取得者層を取り込む。特にローカル中間層向けが有利
- 海外からの新規参入者:2027年の法制施行を前提にビジネスモデルを設計する。同時に初期のポジション取りも行う
たとえば、日本のデベロッパーがプノンペン郊外でボレイ型住宅を開発するケースを考えましょう。まず、2026年中に引き渡しと登記を終えれば、購入者に印紙税免除を訴求できます。さらに、自社保有の住戸は2026年内の売却でCGT負担を抑えられます。
このように、フェーズ別の出口戦略が今後のリターンに直結します。
■ ローカル需要と価格形成への影響
印紙税免除の主な受益者はローカル中間層です。特に、21万ドル以下の郊外ボレイや中価格帯コンドの需要が刺激されます。
一方で、高級コンドミニアム市場では供給過多が続いています。そのため、価格は横ばい〜やや下押しの傾向です。実需・投資家ともに「選ぶ側が有利」な状況と言えます。
したがって、投資家は次の2つを組み合わせるのが得策です。
- まず、印紙税免除が効く〜21万ドルの住宅
- 次に、新空港や幹線道路沿いの新興エリア
制裁リスクとコンプライアンス:プリンス・グループ案件の教訓
■ 何が起きたのか
2026年1月、プリンス・グループの高級案件5件で販売停止措置が取られました。これは米英の制裁を受けた対応です。なお、契約済みの購入者は引き渡し可能ですが、新規販売は止まっています。加えて、関連銀行の清算・資産凍結も進んでいます。
また、Steptoeの制裁アップデートによれば、同グループは「東南アジア最大級のサイバー詐欺ネットワーク」と位置付けられています。そのため、多数の関連企業・個人が一括で制裁対象です。
■ 不動産ビジネスへの示唆
この事案は3つの教訓を示しています。
- まず、デベロッパーの資金源やオーナー構造が制裁対象になり得る
- 次に、制裁が発動すると販売停止や資産凍結で価値が毀損する
- さらに、購入者や金融機関など関係者全員がリスクを負う
つまり、急成長市場でも透明性の低いプレーヤーは排除されます。したがって、誰から買うかがリターンを大きく左右する時代です。
コンプライアンス・チェックポイント
■ デベロッパー調査
2026年以降は、以下のチェックが「最低ライン」です。
- まず、最終受益者(UBO)の制裁リスト該当の有無
- 次に、過去の引き渡し遅延・未完案件の有無
- 加えて、AML/CFTに関するポリシーの有無
■ プロジェクト調査・金融・税務
また、プロジェクト自体のチェックも欠かせません。
- まず、土地権原(ハードタイトル等)の確認
- 次に、環境・建築許認可の適法性
- さらに、販売スキームが現地法に適合しているか
- 加えて、送金ルートと通貨の適法性
- 最後に、CGT・印紙税・不動産税の事前試算
なお、これらは自社でリスト化するだけでは不十分です。KPMG CambodiaやPwC Cambodia等の最新情報も定期的にチェックしましょう。
2026年にカンボジア不動産ビジネスへ参入するためのアクション
ここまでの内容を踏まえ、具体的なアクションを整理します。
- まず、税制のマップを作る。CGTや印紙税、不動産税を一覧化する。そのうえで、有利なセグメントと保有期間を整理する
- 次に、ターゲットセグメントを決める。たとえば中間層向けボレイ、サービスアパートメント、物流系不動産などが候補になる
- さらに、パートナーのクレジットチェックを標準プロセス化する。特に制裁リスクの確認は必須
- 最後に、出口戦略込みのシミュレーションを行う。2026年内売却・長期保有・リファイナンスの複数シナリオで試算する
まとめ:短期の「窓」と長期の「信頼」を同時に取りに行く
最後に、本記事のポイントを整理します。
- まず、2026年の税制は「最後の優遇ウィンドウ」です。CGT延期と印紙税免除を活用する余地がある
- 一方で、プリンス・グループ案件が示すように、コンプライアンスの甘いプレーヤーは淘汰される流れにある
- したがって、短期の税制メリットを取りつつ、「長期で信頼されるプレーヤー」のポジションを築くことが鍵になる
「高利回り」「新興市場」だけでは不十分です。具体的なルールとコンプライアンスの潮流を踏まえた戦略が必要です。それが、今後3〜5年の投資成果に大きな差を生むでしょう。
